この記事では、企業のオウンドメディア運営を3年担当した私の経験から、オウンドメディア運営の方法について解説します。
具体的には、オウンドメディア運営を行う手順から、記事の制作を管理する方法、運営に必要な役割・人数までご紹介。
これからオウンドメディアの運営を始めようと思っている方、オウンドメディアを運営しているが、運用体制に悩みを抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
オウンドメディア運営の方法・手順
オウンドメディアを運営する手順を紹介します。
いきなりコンテンツを作るのではなく、目的や戦略を明確にしたり、運営体制を整えたりすることが重要です。
目的・戦略を決める
まずは目的と戦略を明確にしましょう。オウンドメディアを運営する主な目的として以下があります。
- リード獲得
- 購入・登録の増加
- ブランディング・認知拡大
また、検索エンジン経由で集客(SEO)するのであれば、どのキーワード領域を攻めていくべきなのか、といった戦略を決める必要があります。
例えば、商材が「人材紹介業(転職エージェント)」であれば、転職を検討している人が抱えてる悩みにフォーカスしたキーワードを選定していく、といった具合です。
※リード獲得が目的の場合、顧客フェーズに応じたコンバージョンポイントを用意することも重要です。「リード獲得」が目的ならば、「無料相談」、「お役立ち資料のダウンロード」などが用意されているケースが多いです。
また、自社製品・サービスに対して、「顕在的なニーズを持つユーザー」と「潜在層のユーザー」にそれぞれ別のCVポイントを設定することを推奨します。上述した例の場合、「無料相談」というコンバージョンポイントは潜在層向け、「資料のダウンロード」は潜在層向けになります。
リソースの確保
目的や戦略が決まったら、運営リソースを確保しましょう。ひとえにリソースといっても以下2つの観点があります。
- 運営メンバーの作業工数
- 外注費(コンテンツ制作を外部に委託する場合)
なお、コンテンツを外注する費用については以下の記事で紹介しています。
「ブログ記事の作成を外注する方法・ポイントを解説!企業のオウンドメディア担当者向け」
Webサイトの構築
Webサイトを構築するには、ドメインを取得する必要があります。ドメインを取得後、CMSを利用してWebサイトを構築しましょう。
既に自社のWebサイトが存在する場合は、サブディレクトリにオウンドメディアを設置するケースが多いです。例えば、既存のWebサイトのURLが「https://example.com」であれば「https://example.com/blog」といった具合です。
キーワードの選定
Webサイトの構築が完了したら、(SEOで集客する場合)実際にどんなキーワードで上位表示を狙うか決めていきましょう。
キーワード選定で重要な考え方
キーワードの選定方法は、メディアの目的によって変わります。
自社が求めるコンバージョンにつながるようなキーワードを選んでいくのが理想です。
一方、認知の拡大を目的として運営するのであれば、検索ボリュームの大きいキーワードから選んでいくのが理想です。
ただし、メディアの目的が何であれ、検索ボリュームの大きいビックキーワードから選定してしまうと、上位表示させることは難しいです。なぜなら、検索需要の大きいキーワードは多くのサイトが流入を獲得しようと対策しており、競争率が高いからです。
そのため、初めは検索ボリュームの小さいロングテールキーワードから選定していくことをお勧めします。ちなみに、ロングテールキーワードは3語以上のクエリなるケースが多く、検索ボリュームが小さく、多くの流入数が見込めない一方で、ニーズが顕在化しているユーザーがアクセスする傾向があるため、CVRが高くなりやすいメリットがあります。
例えば、「転職エージェント」「転職エージェント おすすめ」というキーワードよりも「転職エージェント おすすめ 20代 IT」や「転職エージェント おすすめ 第二新卒」といったキーワードの方がニーズが顕在化していることがわかります。
検索ボリュームはキーワードプランナーなどで調査できます。
また、近年はキーワードではなく、トピック(同じような検索結果となるキーワードが集まったもの)ごとに記事を作成した方が効率が良い(1ページで多くの検索キーワードにヒットさせられる)という考え方もあります。トピックごとにキーワードを洗い出すには、キーワードのグルーピングツールを使用すると便利です。
キーワードを選定する手順
では、具体的なキーワードを選ぶ手順を紹介します。手順は以下の通りです。
①商材の特徴から軸となるキーワードを決める
まずは軸となるキーワードを決めます。軸となるキーワードとは、例えば商材が「人材紹介業(転職エージェント)」であれば「転職」「中途採用」「第二新卒」などが軸のキーワードとして考えられます。
②ラッコキーワードやキーワードプランナーで対策キーワード候補を洗い出す
軸となるキーワードを決めたら、「キーワードプランナー」や「ラッコキーワード」といったツールを活用して、掛け合わせキーワードを広げていきます。
③検索ボリュームやCPC、難易度、CVの可能性などからキーワード候補を絞り込む
②で洗い出したキーワード候補の中から、対策する優先順位を決めていきます。優先順位をつける観点は、主に以下です。
- 検索ボリューム
- リスティング広告におけるCPC
- CV可能性
検索ボリュームは先述の通りです。
リスティング広告のCPCとは、リスティング広告を出稿する際のクリック単価のことです。CPCが高ければ、その分多くの企業が出稿したい(コンバージョンを獲得できると考えている)キーワードと考えることができます。CPCが高いにも関わらず、自然検索枠(SEO)に表示されているページの品質が低ければ、CVする可能性の高いキーワードで上位表示が狙いやすいと言えます。また、「CV可能性」とは、CPCの高さなども含まれますが、顕在的なニーズを持つユーザーが検索するキーワードや、自社商材と関連性の高いキーワードなどが該当します。
(外注の場合)発注する
対策キーワードが決まった後のフローは自社で内製する場合と外注する場合でフローが異なります。
<記事制作のパターン>
- 構成案作成からライティングまで外注
- 構成案を内製、ライティングを外注
- 構成案作成からライティングまで内製
ここでは、以下パターン1の構成案からライティングまで、まるっと外注する場合の発注方法を紹介します。
記事を外注する場合は事前に本数や単価について、外注先と認識を擦り合わせておきましょう。また、発注に際して社内稟議などを進めましょう。左記フローの中で特に問題がなければ発注します。
また発注後、先方が構成案の作成を完了した段階で、原稿を共有してもらうことをおすすめします。というのも、構成は記事の品質を決定づける重要な要素です。構成段階で問題があると、「低品質なコンテンツになってしまう」、「自社で大幅な修正工数が発生する」といった事態が発生する可能性があります。
外注する場合のフローやポイントは以下の関連記事で解説しています。
「ブログ記事の作成を外注する方法・ポイントを解説!企業のオウンドメディア担当者向け」
記事構成案の作成
キーワードを確定した後、自社で構成案を作る場合、以下の手順がおすすめです。
- 上位サイトの構成やサジェストキーワード・再検索キーワード、上位サイトの獲得している副次キーワードなどから、ユーザーの検索意図を把握して、h2大見出しを決めていく
- あらゆる情報源や自分の経験を元にh2の内容に対応するh3中見出しを決める
- h3の内容をさらに掘り下げて解説したい場合はh4を設定する。(ただしマストではない。)
また、ライティングを外注する場合は見出しを設定するだけでなく、各見出しでどんな内容を記述するか箇条書きでメモしておくと、外部ライターとの認識の齟齬が生まれにくくなります。
ライティング
構成案を作成したら、文章を執筆していきます。
各見出しに対して、「PREP法(結論→理由→具体例→結論)」の順で執筆すると、ユーザーが理解しやすくなるので、おすすめです。
また、SEOライティングにおいてはユーザーを自社サイトから離脱させないことが重要です。そのため、ただ知識を提供するだけでなく、具体的な方法まで解説し、ユーザーのアクションまで促せるような、ユーザーのニーズを網羅的に満たすコンテンツ作成を心掛けましょう。また、執筆するテーマについて、自社サイト内に詳しく解説している記事があれば、内部リンクとして紹介することも有効です。
画像作成
ユーザーの理解度を高めるためには、画像も積極的に活用し解説しましょう。
また、例えば、ツールのリード獲得が目的であれば、そのツールを活用した解説を行うことで、実際の使用イメージが湧きやすくなり、CVRの向上が見込めます。
さらに、画像のトーンマナーを統一させることも重要です。
また、コンテンツ内の画像だけでなく、アイキャッチ画像を作成することで、SNSなどでシェアされた際に、引きのある形でユーザーにコンテンツを訴求することができます。
校正・校閲・編集
ライティング原稿が上がってきたら、校正・校閲、編集を行います。
具体的には誤字脱字はないか、記載されている内容のファクトチェックなどです。
※ライティングの外注した場合は、修正依頼を出すという選択肢もあります。
また、編集する場合は以下の対応を行うことも重要です。
- CV獲得につなげる観点での文章修正
- ユーザーニーズを充足させる観点で、足りていない記述の加筆、不要な部分のカット
- 内部リンクの最適化
CMSへの入稿・公開
原稿の修正対応が完了したら、CMSに入稿し、記事の公開作業を行います。CMSには「Wordpress」、「Wix」といったサービスがあります。一般的にSEOに適しているCMSは「Wordpress」であると言われています。利用率も「Wordpress」が最も高いです。
効果測定
公開した記事はデイリーで効果を測定することが重要です。測定する指標は主に以下です。
- 検索順位
- クリック数(セッション数)
- CV数
これらの指標を記事ごとだけでなく、サイト全体の平均・合計を測定し、月・週単位で推移を比較することが重要です。
なお、公開した記事が検索結果で上位されるまでの期間は、私の経験上、早くて1週間、遅くて2ヶ月ほどです。
※当然、どれだけ時間が経っても上位表示されない記事もあります。その場合は後述するリライトが必要です。
リライト
リライトとは、記事を公開後に修正することを指します。リライトは大きく、以下2種類に分かれます。
- コンテンツの改善
- CVRの改善
コンテンツの改善
まず、コンテンツ改善のリライトについて説明します。記事を公開してもなかなか順位が上がらないことがあるでしょう。目安として公開後2ヶ月経っても上位表示されていない記事はリライト対象とした方が良いです。リライトの方法としては、先述した構成案作成・ライティング時と同様の観点で見直しましょう。繰り返しになりますが、具体的に以下の観点で、情報に抜け漏れがないか確認することが重要です。
- 上位サイトの構成・獲得キーワード
- サジェストキーワード・再検索キーワード
記事を執筆したタイミングから、上記のキーワードが変わっている(ニーズが変化している)ことがあります。早くニーズの変化に気づき、コンテンツに反映させることができれば、よりユーザーのニーズを満たしたコンテンツとして、上位表示される可能性があります。
また、特定のキーワードと一緒に使われることの多い「共起語」の網羅率を高めることで、ユーザーニーズの抜け漏れを防ぎやすくなるという考え方もあります。共起語は「共起語検索ツール」などで調査できます。
さらに、記事の中で情報が古い箇所や説明がわかりにくい箇所なども修正しましょう。
CVRの改善
CVR改善のためのリライトとは、ユーザー行動に合わせてCTAの設置位置や見出しの順番を変更したりすることで、CV数の向上を目指す施策です。例えば、検索結果で上位にランクインし、流入数を一定獲得できているものの、CVが発生していない記事は、こちらのCVR改善のリライトを行うべきです。
ユーザーの行動を把握するためには、Microsoftの「Clarity」というツールがおすすめです「Clarity」では以下を調査できます。
- ユーザーが多いクリックした箇所:ユーザーが関心を寄せやすい箇所がわかる
- ユーザーのスクロール率:ユーザーがどこで離脱しやすいのかわかる
- レコーディング:ユーザーがページ内で具体的にどのように行動したのか録画を見れる
上記の機能を活用して、例えばユーザーが関心のあるテーマを前半に移動させて、離脱率を改善したり、ユーザーが関心のある見出し付近や、ユーザーが離脱しにくい部分にCTAを設置することで、CVRを改善したりといった工夫を行います。
※なお、リライトする記事の選び方については、以下の記事で紹介しています。
「リライトするSEO記事の選び方やタイミングを教えてください。」
「リライトは難しい?やり方や作業時間、効果が得られる時期を解説」
記事の制作を管理する方法
オウンドメディア運用の一連のフローを紹介してきました。
本章では、特に記事の制作を管理する方法について解説します。
オウンドメディア運営において、継続的にコンテンツをリリースできなければ、更新頻度が低いサイトと見なされ、検索エンジンからの評価が下がる傾向があります。そのため、以下にて紹介する方法を参考にするなどして、記事をコンスタントに制作・公開できる体制を整えましょう。
具体的には、以下フローの期日・担当者を決め、シートに記入します。
- 構成案作成
- 発注
- ライティング・画像作成
- 外注記事の編集
- CMS入稿・公開
基本的に全てのタスクに期日を設定することが重要です。というのも、どの段階で遅れが発生しているのか特定しやすくなるからです。対応完了したら、「対応完了」などと記入し、運営メンバー全員がステータスを確認できるようにしましょう。
オウンドメディアの体制構築に必要な役割・人数
オウンドメディアの体制を構築するには、どのような役割、そしてどれくらいの人員が必要なのでしょうか。本章ではオウンドメディアの運営を円滑にするために必要な役割と適切な人数について解説します。
※前提として、以下の役割を同じメンバーが兼任することがあります。
※組織・メディアの規模によって、アサインできる数は様々です。
メディアディレクター(チームリーダー)
メディアの戦略構築や外注予算の確保、運営チーム全体の進捗管理などを行います。人数は1名であるケースが多く、後述する編集者が兼任していることも多いです。
編集者(コンテンツ品質管理)
ライターが執筆した原稿や外注した記事の編集、校正などコンテンツの品質管理を担当する役割です。記事の制作本数に依りますが、1~2名であることが一般的です。
ライター
記事を執筆する役割です。外部の業者に委託することも多いですが、内製する場合は2名以上アサインするのがおすすめです。
数値の分析者
先述した「効果測定」の業務を担当する役割です。
全体の流入・CV発生状況や、記事ごとの順位やクリック数を調査します。調査したデータを基に要因を分析し、リライト対象記事の決定などのネクストアクションを決めます。
こちらは1名が担当するケースが多く、メディアディレクターか編集者が兼任するケースが多いです。
外注先との折衝担当
記事を外注する場合、社内稟議や外注先とのコミュニケーションを担当するメンバーが必要です。
外注先とのコミュニケーションとは、具体的に記事本数・単価の交渉や見積書・請求書の送付依頼、発注書・検収書の送信などです。また窓口として、その他チャットでの連携なども担当します。
こちらの業務は1名が担当するケースもありますが、メディアディレクターや編集者が兼任することが多いです。